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制度解説

2026年度診療報酬改定で医師事務作業補助体制加算はどう変わる?ICT・生成AI活用による要件見直しを解説

【監修】小松 大介

目次

はじめに

2026年度診療報酬改定では、医師の働き方改革や医師事務作業の効率化を背景に、医師事務作業補助体制加算の要件が見直されます。

特に注目されるのが、生成AIを活用した文書作成補助システムや音声入力システム、RPA(Robotic Process Automation)、患者向け説明動画などのICT機器を活用することで、医師事務作業補助者の人員配置基準を柔軟に算入できるようになる点です。

一方で、単にシステムを導入すればよいわけではありません。院内で組織的に活用されていること、医師・医師事務作業補助者が日常的に使用していること、研修や効果測定の体制を整えることなど、実務上押さえるべきポイントがあります。

本記事では、医師事務作業補助体制加算の基本的な仕組みから、2026年度改定で見直される内容、必要人数の計算方法、病院が今から確認すべき対応までわかりやすく解説します。

2026年度診療報酬改定で医師事務作業補助体制加算はどう変わるのか

改定の背景は医師の事務負担軽減と業務効率化

医療機関では、医師の長時間労働や事務作業負担の軽減が引き続き重要な課題となっています。診断書や診療情報提供書、退院時サマリーなどの文書作成、診療記録への入力、各種データ整理などは、医師の業務時間を圧迫しやすい業務の一つです。

これまでも医師事務作業補助者の配置により、医師の負担軽減が図られてきました。一方で、人材確保が難しくなる中、今後は人員配置だけでなく、ICTや生成AIを活用した業務効率化も重要になります。

今回の改定は、医師事務作業補助者の配置体制に加え、医師の事務作業をどのように効率化し、働き方改革につなげるかを評価する見直しといえます。

見直しのポイントは「人員配置基準の柔軟化」と「業務範囲の明確化」

今回の見直しでは、ICT機器等を活用する医療機関について、医師事務作業補助者1人を1.2人または1.3人として配置人数に算入できる仕組みが新設されます。

また、医師事務作業補助者が実施できる業務範囲も、医療現場の実態に合わせてより具体的に整理されています。文書作成補助や診療記録への代行入力など、対象となる業務が明確化される一方で、診療報酬請求事務や窓口・受付業務などは対象外です。

つまり、2026年度改定では、ICT・生成AIを活用した業務効率化と、医師事務作業補助者の役割整理の両面が重要になります。

そもそも医師事務作業補助体制加算とは

医師の事務作業を補助する体制を評価する加算

医師事務作業補助体制加算は、医師の指示の下で、医師事務作業補助者が文書作成や診療記録の代行入力などを行う体制を評価する加算です。

医師は、診療以外にも診断書や診療情報提供書の作成、診療録への入力、各種データ整理など、多くの事務作業を担っています。こうした業務を医師事務作業補助者が支援することで、医師の負担軽減や診療の質向上、働き方改革につなげることが目的です。

そのため、医師事務作業補助体制加算では、単に事務職員を配置しているかではなく、医師の事務作業を補助する体制が適切に整備されているかが問われます。

医師事務作業補助体制加算1と2の違い

医師事務作業補助体制加算には、加算1と加算2があります。大きな違いは、一定の勤務経験を有する医師事務作業補助者の配置が求められるかどうかです。

加算1では、当該医療機関で3年以上の医師事務作業補助者としての勤務経験を有する職員を、配置区分ごとに5割以上配置することが求められます。加算2では、3年以上の勤務経験は同じですが、配置要件はありません。そのため、加算1が加算2よりも体制整備の要件が厳しい加算といえます。

2026年度改定後にICT機器等を活用して配置人数を算入する場合も、加算1では経験者要件の確認が必要です。配置人数だけでなく、職員の経験年数や配置状況もあわせて整理しておくことが重要です。

医師事務作業補助体制加算1と2の違い

医師事務作業補助者が行える業務・行えない業務

医師事務作業補助者が行える業務は、医師の指示の下で行う事務作業に限られます。具体的には、診断書、診療情報提供書、退院時サマリー、診療計画書などの文書作成補助や、診療記録、検査オーダー、食事オーダー、クリニカルパス等への代行入力が含まれます。

また、患者・家族への説明文書の準備・作成、診療録や画像検査結果等の整理、診療に関するデータ整理、院内がん登録等の統計・調査・入力作業、教育や研修・カンファレンスの準備なども対象となります。

一方で、診療報酬請求事務、DPCコーディング、窓口・受付業務、医療機関の経営・運営のためのデータ収集業務、看護業務の補助、物品運搬業務などは、医師事務作業補助者の業務には含まれません。

医療機関では、加算の算定にあたり、医師事務作業補助者が実際に担っている業務が施設基準上認められる範囲に収まっているかを確認しておく必要があります。

医師事務作業補助者が行える業務・行えない業務
出典:厚生労働省「個別改定項目について」

2026年度改定で新たに評価されるICT・生成AI活用の内容

医師事務補助体制加算の要件となる4種類のICT機器

生成AIを活用した医療文書等の文書作成補助システム

2026年度改定で特に注目されるのが、生成AIを活用した医療文書等の文書作成補助システムです。

対象となるのは、退院時要約、診断書、紹介状等の原案作成を自動的に行い、文書作成業務を大幅に効率化するシステムです。医師や医師事務作業補助者が一から文書を作成するのではなく、生成AIが原案を作成し、それを確認・修正することで、文書作成にかかる時間の短縮が期待されます。

ただし、単に汎用的な生成AIを使っているだけではなく、医療文書等の作成補助として、院内で組織的に導入・活用されていることが重要です。

②医療文書用の音声入力システム

音声入力システムも、医師事務作業の効率化に資するICT機器等として位置づけられています。

対象となるのは、診療録、退院時要約、診断書、紹介状などの作成に対応する医療文書用の音声入力システムです。医師が話した内容を文書化することで、入力作業の負担軽減や記録作成の効率化につながります。

なお、施設基準では、汎用的な音声入力機能は対象外とされています。単なる文字起こしアプリではなく、医療文書の作成に対応したシステムであるかを確認することが重要です。

③RPAによる定型入力作業の自動化

RPAも、医師事務作業補助者が担う定型的な入力作業を効率化する手段として評価対象になります。

具体的には、救急医療情報システム等への医療データの入力など、定型的な作業を自動化する仕組みが想定されています。手作業で繰り返し行っている入力業務をRPAに置き換えることで、作業時間の短縮や入力ミスの削減が期待されます。

RPAについては、導入後にどの業務で活用しているかを整理し、対象業務を継続的に見直していくことが重要です。

④10種類以上の患者向け説明動画

患者向け説明動画も、医師事務作業や説明業務の効率化に資する取り組みとして位置づけられています。

対象となるのは、入退院時の説明、検査・処置、麻酔・鎮静、手術、インフォームド・コンセント、医療安全、感染対策などに関する患者向け説明動画です。疑義解釈では、少なくとも3つの領域にわたり、合計10種類以上の説明動画を活用することが示されています。

説明動画を活用することで、患者・家族への説明内容を標準化し、医師や医師事務作業補助者の説明準備や補足対応の負担軽減につなげることが期待されます。

ICT機器を活用した場合の配置人数の算入方法

生成AI文書作成補助システムを含めて活用する場合は1人を1.2人として算入

2026年度改定では、一定の要件を満たす場合、医師事務作業補助者1人を1.2人として配置人数に算入できるようになります。

対象となるのは、生成AIを活用した医療文書等の文書作成補助システムを含むICT機器等を、院内で組織的に導入・活用している医療機関です。

たとえば、医師事務作業補助者を10人配置している場合、要件を満たせば算入上は12人相当として扱うことができます。ただし、これは単に実配置を減らすための仕組みではなく、ICT活用によって医師事務作業の効率化や負担軽減が図られていることが前提になります。

さらに音声入力・RPA・説明動画のいずれかを広く活用する場合は1.3人として算入

生成AI文書作成補助システムの活用に加えて、医療文書用の音声入力システム、RPA、患者向け説明動画のいずれかを広く活用している場合は、医師事務作業補助者1人を1.3人として算入できます。

たとえば、医師事務作業補助者を10人配置している場合、要件を満たせば算入上は13人相当として扱うことができます。

この仕組みを活用するには、自院の業務課題に合わせて、どのICT機器等を組み合わせるかを検討する必要があります。文書作成負担を軽減したいのか、入力作業を効率化したいのか、患者説明を標準化したいのかによって、優先すべき機器や運用方法は異なります。

ICT活用による医師事務作業補助者1.2人・1.3人算入

必要人数の計算方法と注意点

医師事務作業補助体制加算では、15対1、20対1、25対1、30対1、40対1、50対1、75対1、100対1など、届け出る配置区分に応じて必要な医師事務作業補助者数を計算します。

基本的には、届出病床数を配置区分で割り、必要人数を算出します。たとえば、200床で20対1補助体制加算を届け出る場合、200床÷20=10人となります。

ICT活用による1.2倍・1.3倍の算入を使う場合は、実際に配置している人数と、算入後の人数を分けて確認することが重要です。また、医師事務作業補助体制加算1を届け出る場合は、3年以上の勤務経験を有する医師事務作業補助者の配置要件もあわせて確認する必要があります。

医師事務補助体制加算の配置区分別点数・実質配置割合

ICT活用による配置基準柔軟化で満たすべき要件

院内で組織的に導入し、日常的に活用されていること

ICT機器等を活用して配置人数の算入方法を適用するには、対象となる機器を院内で組織的に導入し、医師や医師事務作業補助者が日常的に活用していることが必要です。

一部の診療科や職員だけが試験的に利用している状態ではなく、実際の業務の中で継続的に使われていることが重要です。疑義解釈では、以下のような目安が示されています。

  • 生成AI文書作成補助システム、医療文書用の音声入力システム:医師または医師事務作業補助者の過半数が少なくとも毎週使用していること
  • RPA:医師事務作業補助者が行える業務のうち5業務以上に活用され、毎年追加されていること
  • 患者向け説明動画:外来を含めた1日当たりの使用回数が、一般病床数の概ね15%以上であること

そのため、ICT機器等を導入する際は、対象業務や利用ルールを明確にし、利用実績を説明できる状態にしておく必要があります。

参考:厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その2)」

安全管理ガイドライン・AI事業者ガイドラインへの対応

電子カルテなどの医療情報システムと連動して医療情報を取り扱う場合は、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」や、総務省・経済産業省の「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」への準拠が求められます。

また、生成AIなどのAI技術を用いる製品・サービスについては、経済産業省・総務省の「AI事業者ガイドライン」の遵守も必要です。

製品選定時には、機能面だけでなく、医療情報の取り扱い、権限管理、ログ管理、ベンダー側のガイドライン対応状況を確認しておくことが重要です。

操作方法と生成AIの適切な利用に関する研修

届け出たICT機器等については、全ての医師事務作業補助者に対して、操作方法や生成AIの適切な利用に関する研修を実施する必要があります。

疑義解釈では、生成AIの研修について、医療分野における生成AIの特徴や利用時のリスク、正確性・信頼性、バイアス・公平性、透明性・説明責任などを扱うことが示されています。また、年1回程度の定期的な開催、医師事務作業補助者や生成AIを活用する医師等の受講、開催日時・出席者・研修項目の記録も求められます。

なお、研修資料としては、非営利法人 医療AIプラットフォーム技術研究組合が公開している「医療・ヘルスケア分野における生成AI利用ガイドライン(第2版)」を活用することも可能とされています。

参考:厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その2)」

導入前後の効果測定と会議体での確認

ICT機器等を活用して配置人数の算入方法を用いる場合は、導入前後における医師事務作業補助者の業務内容、業務量、業務時間を評価する必要があります。

あわせて、医師の事務作業時間や負担感も、年1回程度、定量的または定性的な方法で確認します。たとえば、文書作成時間の変化や、医師・医師事務作業補助者へのアンケートなどが考えられます。

評価結果は、衛生委員会またはこれに準ずる会議体で確認し、必要に応じて運用改善につなげていくことが重要です。

病院が今から確認すべきポイント

現在の配置人数・加算区分・経験者数を確認する

まずは、自院の現在の届出状況を整理することが重要です。現在届け出ている配置区分、届出病床数、医師事務作業補助者の実配置人数、常勤換算数を確認します。

あわせて、医師事務作業補助体制加算1・2のどちらを届け出ているか、3年以上の勤務経験を有する医師事務作業補助者がどの程度配置されているかも確認しておきましょう。

ICT機器等を活用した算入方法を検討する場合、配置人数だけでなく、加算1の経験者要件にも影響するため、現状の体制を数字で把握しておくことが必要です。

医師事務作業補助者の業務内容を棚卸しする

次に、医師事務作業補助者が実際に担っている業務を棚卸しします。

文書作成補助、診療記録への代行入力、診療データ整理など、施設基準上認められる業務に該当しているかを確認します。一方で、診療報酬請求事務、DPCコーディング、受付業務などが混在していないかにも注意が必要です。

また、診療科ごとに業務量や繁閑が異なる場合は、どの部署で負担が大きいのかも整理しておくと、ICT・生成AIの導入対象を検討しやすくなります。

導入前に対象業務・製品要件・記録方法を整理する

ICT・生成AIを導入する前に、どの業務を効率化したいのかを明確にすることが重要です。たとえば、診断書や紹介状の作成を効率化したいのか、定型入力作業をRPA化したいのか、患者向け説明を標準化したいのかによって、導入すべき機器や運用方法は異なります。

製品選定では、医療情報システムとの連携方法、安全管理ガイドラインへの対応状況、権限管理やログ管理、研修支援の有無などを確認しておく必要があります。

また、導入後は利用実績や効果測定の記録が求められます。誰が、どの機能を、どの業務で使用しているのかを把握できるよう、記録方法や管理責任者を事前に決めておくとよいでしょう。

医師事務作業補助体制加算の見直しを病院運営にどう活かすか

システム導入ではなく、業務改善として進める

ICT・生成AIの導入は、加算要件を満たすことだけを目的に進めるものではありません。実際に現場で活用され、医師事務作業の効率化や医師の負担軽減につながることが重要です。

そのためには、対象業務の整理、運用ルールの作成、職員教育、利用状況の確認、効果測定までを一体で進める必要があります。導入後に使われなくなってしまえば、制度対応としても業務改善としても十分な効果は得られません。

医師事務作業補助体制加算の見直しは、単なるシステム導入ではなく、院内の事務作業を見直す機会として捉えることが重要です。

医師事務作業補助者の役割を再整理する

ICTや生成AIを活用することで、文書作成や定型入力などの業務は効率化しやすくなります。一方で、医師事務作業補助者の役割が不要になるわけではありません。

むしろ、ICTを活用しながら、医師の診療業務を支える専門職としての役割を再整理することが重要です。定型的な作業を効率化することで、医師との連携、文書の確認・調整、診療科ごとの業務支援など、より付加価値の高い業務に時間を使いやすくなります。

診療科ごとの業務量や医師のニーズに応じて、医師事務作業補助者の配置や役割分担を見直すことも有効です。

医師の働き方改革とあわせて検討する

医師事務作業補助体制加算の見直しは、医師の働き方改革とも密接に関係します。

文書作成負担の軽減、診療記録の質向上、時間外労働の削減、チーム医療の推進など、ICT・生成AIの活用はさまざまな面で医師の業務改善につながる可能性があります。

そのため、医師事務作業補助体制加算への対応は、単に施設基準を満たすための取り組みではなく、医師が診療に集中しやすい体制を整える施策として検討することが重要です。

まとめ

2026年度診療報酬改定における医師事務作業補助体制加算の見直しは、ICTや生成AIの導入そのものを評価するというより、医師事務作業をどのように効率化し、医師の負担軽減につなげているかが問われる内容です。

そのため、まずは自院の医師事務作業補助者の配置人数、業務内容、医師の事務作業負担、既存システムの活用状況を整理し、どの業務をICT・生成AIで効率化できるかを確認することが重要です。

特に、生成AI文書作成補助システムや音声入力、RPA、患者向け説明動画は、導入後の利用実績や研修、効果測定まで求められるため、早い段階から運用体制を見据えて検討する必要があります。

システム導入を目的化するのではなく、医師事務作業補助者が本来の役割に集中できる環境を整え、医師の働き方改革と診療現場の業務改善につなげていくことが、今回の見直しを活かすポイントです。

シーズ・ワンでは、病院向けのDX・業務改善支援として、業務整理からICT機器の導入検討、運用設計、現場定着までを一体的に支援しています。医師事務作業補助体制加算への対応をきっかけに、院内の事務作業や情報システムの見直しを検討したい医療機関は、お気軽にお問合せください。

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監修

小松 大介
神奈川県出身。東京大学教養学部卒業/総合文化研究科広域科学専攻修了。 人工知能やカオスの分野を手がける。マッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタントとしてデータベース・マーケティングとビジネス・プロセス・リデザインを専門とした後、(株)メディヴァを創業。取締役就任。 コンサルティング事業部長。(株)シーズ・ワン 常務執行役員。200箇所以上のクリニック新規開業・経営支援、300箇以上の病院コンサルティング、50箇所以上の介護施設のコンサルティング経験を生かし、コンサルティング部門のリーダーをつとめる。近年は、病院の経営再生をテーマに、医療機関(大規模病院から中小規模病院、急性期・回復期・療養・精神各種)の再生実務にも取り組んでいる。主な著書に、「診療所経営の教科書」「病院経営の教科書」「医業承継の教科書」(医事新報社)、「医業経営を“最適化“させる38メソッド」(医学通信社)他

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