業務改善・DX
病院の受付DXとは?予約システム・Web問診・自動精算機の導入ポイントを解説
【監修】小松 大介
はじめに
病院の受付では、診療予約の受付や患者情報の確認、問診票の配布・回収、来院受付、会計など、さまざまな業務が発生します。患者が集中する時間帯には窓口や電話が混雑し、受付職員の負担だけでなく、患者の待ち時間にも影響します。
こうした課題への対応として注目されているのが、予約システムやWeb問診、自動受付機、自動精算機、キャッシュレス決済などを活用した「受付DX」です。受付周辺の定型業務をデジタル化することで、業務の効率化や患者の利便性向上が期待できます。
ただし、個別のシステムを導入するだけでは、患者情報の二重入力や手作業による転記が残ることもあります。病院の受付DXでは、予約から問診、来院受付、診察、会計までの流れを整理し、電子カルテや医事会計システムとの連携も含めて検討することが重要です。
本記事では、病院の受付DXで活用される主なシステムや導入のメリット、注意点、具体的な進め方について解説します。
病院の受付DXとは
受付DXとは受付業務をデジタル化・効率化する取り組み
「受付DX」は制度上の正式な用語ではありませんが、医療機関の受付周辺業務をまとめてデジタル化する取り組みを表す言葉として使われています。
単に機器やシステムを導入するのではなく、現在の業務の流れを見直し、患者と職員の双方にとって利用しやすい運用へ変えていくことが重要です。
受付DXの対象となる主な業務
病院の受付DXは、窓口での来院受付だけを指すものではありません。患者が予約してから診療費を支払うまでの、次のような業務が対象となります。
| 段階 | 主な業務 |
| 来院前 | 診療予約、予約変更、患者情報の登録、問診への回答 |
| 来院時 | 診察券やマイナ保険証による受付、受付票の発行 |
| 診察待ち | 診察順や待ち状況の案内、患者の呼び出し |
| 診察後 | 診療費の支払い、領収書・診療明細書の発行、次回予約 |
これらの業務は、それぞれ独立しているように見えても、実際には患者情報や診療情報を通じてつながっています。そのため、受付DXを検討する際は、個別の業務だけでなく、予約から会計までの流れを把握することが必要です。
病院の受付DXで活用される主なシステム
予約システム
電話以外の予約手段を設けることで、患者は受付時間を気にせず手続きを行えます。
病院では、一般外来の予約だけでなく、再診、専門外来、検査、健診など、複数の予約枠を管理する必要があります。また、患者本人からの予約に加え、紹介元医療機関や地域連携室を経由するケースもあります。
そのため、予約システムを選ぶ際は、診療科や担当医ごとの予約設定、予約変更、リマインド通知などの機能に加え、自院の予約経路や運用に対応できるかを確認することが重要です。
Web問診
Web問診は、患者が来院前にスマートフォンやパソコンから問診へ回答する仕組みです。来院後に紙の問診票を記入する必要がなくなり、受付から診察までの手続きを進めやすくなります。
患者の症状や回答内容に応じて質問を出し分けられるほか、診療科ごとに異なる問診票を設定できるシステムもあります。問診結果を電子カルテへ取り込めれば、職員による転記作業も削減できます。
一方で、Web上での回答が難しい患者もいるため、紙の問診票や院内端末など、代替手段を用意しておく必要があります。
自動受付機・再来受付機
自動受付機・再来受付機は、患者が診察券などを使用して来院受付を行う機器です。受付処理のほか、受付票や診察案内票の発行に対応するものもあります。
特に再来患者の多い病院では、窓口を介さずに受付を済ませられるため、来院時の手続きを分散できます。ただし、初診患者、紹介患者、予約外患者などは確認事項が多く、有人窓口での対応が必要になる場合があります。
導入時には、どの患者を自動受付の対象とするかを整理し、予約情報や電子カルテ上の受付状況と連携できるかを確認します。
自動精算機
自動精算機は、患者が診療費を支払い、領収書や診療明細書を受け取るための機器です。現金に加え、クレジットカードなど複数の支払方法に対応する製品もあります。
外来診療費だけでなく、入院費や健診費用の支払いに対応できるかは、製品やシステム構成によって異なります。また、返金、未収金、追加会計など、窓口での個別対応が必要なケースもあります。
自動精算機を導入する際は、医事会計システムから請求金額を取得し、支払結果を反映できるかを確認する必要があります。
キャッシュレス決済
キャッシュレス決済は、クレジットカード、電子マネー、コード決済などを利用して診療費を支払う仕組みです。窓口や自動精算機に決済端末を設置する方法のほか、患者が事前に登録したクレジットカードで診療後に決済する方法もあります。
後払い方式では、患者が会計計算の完了を院内で待たずに帰宅できるため、会計方法そのものを見直すことができます。
対応する決済手段だけでなく、決済手数料、入金のタイミング、返金方法、未収金が発生した場合の運用も確認しておくことが必要です。
病院が受付DXを進めるメリット
受付職員の業務負担を軽減できる
予約受付や問診票の配布・回収、再来患者の受付、現金の受け渡しなど、受付では定型的な業務が多く発生します。これらの一部をシステム化することで、職員が対応する作業量を減らせます。
特に、予約変更の電話対応や問診内容の転記、会計時の現金管理などは、件数が多いほど負担が大きくなります。定型業務を効率化できれば、初診患者への案内や、操作に不慣れな患者への支援など、人による対応が必要な業務へ時間を振り向けやすくなります。
患者の待ち時間や手続きの負担を軽減できる
Web予約やWeb問診を利用すれば、患者は来院前に必要な手続きを進められます。また、自動受付機や自動精算機を活用することで、受付窓口や会計窓口に並ぶ時間の短縮も期待できます。
さらに、診察順や待ち状況を表示できる仕組みがあれば、患者は自分の順番を把握しやすくなります。待ち時間そのものを短くするだけでなく、診察までの見通しを示すことも、患者の負担軽減につながります。
転記や二重入力を減らせる
予約情報や問診結果、会計情報をシステム間で連携できれば、同じ内容を複数回入力する作業を減らせます。
たとえば、Web問診の回答を電子カルテへ取り込むことで、紙の問診票を見ながら転記する必要がなくなります。また、医事会計システムの請求情報を自動精算機へ連携できれば、金額を手入力する作業も不要になります。
転記や二重入力を減らすことは、業務時間の短縮だけでなく、入力ミスや確認漏れの防止にもつながります。
病院が受付DXを導入する際の注意点
電子カルテや医事会計システムと連携できるか確認する
予約システムやWeb問診、自動精算機を個別に導入しても、既存システムと連携できなければ、患者情報や問診結果、請求金額を職員が手入力する作業が残ります。
確認すべきなのは、単に「連携可能か」ではなく、どの情報をどの方法で連携できるかです。たとえば、患者ID、予約日時、診療科、問診結果、請求金額、支払済み情報など、業務上必要な項目が連携対象に含まれているかを確認します。
また、連携に追加開発が必要な場合は、費用や導入期間、保守時の問い合わせ先も明確にしておく必要があります。
病院特有の複雑な受付・会計業務に対応できるか
病院では、初診・再診、予約患者・予約外患者、紹介患者、複数科受診、検査のみの受診など、患者によって受付方法が異なります。会計についても、外来診療費だけでなく、入院費、健診費、文書料などを扱う場合があります。
すべての患者を同じ手順で処理できるとは限らないため、どの業務を自動化し、どのケースを有人対応とするかを整理しておくことが重要です。
デジタル機器を利用しにくい患者にも配慮する
高齢者をはじめ、スマートフォンを持っていない患者や、Web予約・Web問診の操作が難しい患者もいます。また、視覚や聴覚、身体機能への配慮が必要な患者や、外国人患者への対応も必要です。
受付DXは、有人窓口をなくすことが目的ではありません。定型的な業務を効率化しつつ、支援が必要な患者には職員が対応できる運用を残します。
システム障害時の代替運用を決めておく
通信障害や機器の故障が発生すると、予約情報の確認や受付、精算ができなくなる可能性があります。
障害時に紙の帳票や有人窓口へ切り替える方法、復旧までの患者案内、各部署への連絡手順などをあらかじめ決めておきます。障害対応を特定の職員だけが把握するのではなく、マニュアルとして共有することも必要です。
導入費用だけでなく連携・保守費用も確認する
受付DXにかかる費用は、機器やシステムの購入費だけではありません。電子カルテや医事会計システムとの連携費、月額利用料、決済手数料、保守費、消耗品費、将来の機器更新費なども発生します。
初期費用だけで比較すると、導入後の運用コストが想定を上回ることがあります。導入から更新までを含めた総コストで比較することが重要です。
病院が受付DXを進める手順
1.現在の受付業務と患者導線を整理する
まずは、患者が予約してから会計を終えるまでの流れを整理します。
あわせて、受付職員がどの場面で何をしているか、混雑しやすい時間帯はいつか、紙や手入力が残っている箇所はどこかを確認します。患者や職員から寄せられている不満や要望も、課題を把握するための参考になります。
2.解決したい課題と対象業務を決める
次に、受付DXによって何を改善したいのかを明確にします。
たとえば、予約電話を減らしたい、問診票の転記をなくしたい、受付や会計の待ち時間を短縮したいなど、課題によって優先すべきシステムは異なります。
システムの導入自体を目的にせず、対象とする業務と期待する効果を具体的に定めます。
3.必要な機能とシステム連携の要件を整理する
対象業務が決まったら、必要な機能や連携範囲を整理します。
たとえば、予約システムであれば、対象となる診療科や患者区分、予約変更の可否、リマインド通知の有無などを確認します。Web問診や自動精算機についても、電子カルテや医事会計システムとどの情報を連携するかを明確にします。
複数施設への展開を想定している場合は、病院と併設クリニックで共通利用できるかも確認します。
4.システムを比較し、一部の業務から試験導入する
要件をもとに、複数のシステムを比較します。機能や費用だけでなく、既存システムとの連携実績、同規模の病院での導入事例、保守体制も確認します。
導入時は、特定の診療科や患者区分に対象を限定し、操作性や情報連携、例外対応に問題がないかを検証します。試験導入で見つかった課題を修正してから、対象範囲を広げます。
5.導入効果を確認して運用を改善する
導入後は、Web予約の利用率、電話件数、受付・会計の待ち時間、職員の作業時間などを確認します。
利用率が伸びない場合は、患者への案内方法や対象患者、操作手順を見直します。受付DXは導入して終わりではなく、実際の利用状況に合わせて運用を改善していくことが必要です。

まとめ
病院の受付DXでは、予約システムやWeb問診、自動受付機、自動精算機、キャッシュレス決済など、さまざまな仕組みを活用できます。
一方で、個別のシステムを導入するだけでは、二重入力や複数画面の操作が残り、十分な業務改善につながらない場合があります。予約、問診、来院受付、診察、会計までの流れを整理し、電子カルテや医事会計システムとの連携も含めて検討することが重要です。
まずは、自院の受付業務のどこに負担や待ち時間が生じているかを把握し、優先度の高い業務から段階的に進めるとよいでしょう。
シーズ・ワンでは、病院の業務整理をはじめ、電子カルテや予約システム、Web問診、自動精算機などの選定・導入、運用定着まで支援しています。受付業務の効率化やシステム連携に課題を感じている場合は、お気軽にご相談ください。
監修
小松 大介
神奈川県出身。東京大学教養学部卒業/総合文化研究科広域科学専攻修了。 人工知能やカオスの分野を手がける。マッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタントとしてデータベース・マーケティングとビジネス・プロセス・リデザインを専門とした後、(株)メディヴァを創業。取締役就任。 コンサルティング事業部長。(株)シーズ・ワン 常務執行役員。200箇所以上のクリニック新規開業・経営支援、300箇以上の病院コンサルティング、50箇所以上の介護施設のコンサルティング経験を生かし、コンサルティング部門のリーダーをつとめる。近年は、病院の経営再生をテーマに、医療機関(大規模病院から中小規模病院、急性期・回復期・療養・精神各種)の再生実務にも取り組んでいる。主な著書に、「診療所経営の教科書」「病院経営の教科書」「医業承継の教科書」(医事新報社)、「医業経営を“最適化“させる38メソッド」(医学通信社)他