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電子カルテのリプレイスを解説|乗り換え・データ移行のポイントと進め方

【監修】小松 大介

目次

はじめに

電子カルテのリプレイスとは、現在利用している電子カルテを新しいシステムへ入れ替えることです。

サーバーや機器の更新、製品サポートの終了、院内業務の変化などをきっかけに、既存の電子カルテをそのまま更新するのか、別の製品へ乗り換えるのかを検討する病院もあります。近年では、オンプレミス型からクラウド型電子カルテへの移行も選択肢の一つとなっています。

一方、電子カルテのリプレイスでは、新しい製品を選ぶだけでなく、既存データの移行や部門システム・医療機器との連携、職員への教育など、さまざまな準備が必要です。

本記事では、電子カルテのリプレイスを検討するタイミングから、確認すべきポイント、データ移行、オンプレミス型からクラウド型へ移行する際の注意点、実際の進め方まで解説します。

電子カルテのリプレイスで考えられる3つのパターン

電子カルテのリプレイスには、現在のシステム環境や見直しの目的によって、いくつかのパターンがあります。代表的なのは、同一ベンダーでの更新、他社製品への乗り換え、オンプレミス型からクラウド型への移行です。

パターン概要
同一ベンダーでの更新現在利用している電子カルテの後継製品や新しいバージョンへ更新する
他社電子カルテへの乗り換え操作性や機能、費用、サポートなどを見直し、別ベンダーの電子カルテへ変更する
オンプレミス型からクラウド型への移行サーバー更新などを契機に、オンプレミス型からクラウド型の電子カルテへ移行する

それぞれ、既存環境をどこまで引き継げるか、リプレイスに伴ってどの範囲まで見直す必要があるかが異なります。

どのパターンが適しているかは、現在のシステム環境やリプレイスの目的を踏まえて検討する必要があります。

電子カルテのリプレイスを検討するタイミング

サーバーや機器の更新時期を迎えたとき

オンプレミス型の電子カルテでは、サーバーや端末、OSなどの更新が必要になるタイミングがあります。また、サーバーや端末などをリース契約で導入している場合は、契約満了もシステム構成を見直す一つのきっかけになります。

ハードウェアの保守終了やOSのサポート終了、リース契約の満了が重なると、既存環境を維持するためにまとまった費用が発生することもあります。

こうしたタイミングでは、現在の電子カルテをそのまま継続するのか、それとも別の製品やクラウド型への移行も含めて見直すのかを検討するとよいでしょう。

電子カルテのサポート終了や製品更新が発生するとき

利用している電子カルテのバージョンがサポート終了を迎えたり、ベンダーの製品統廃合によって後継製品への移行が必要になったりする場合があります。

この場合、後継製品へそのまま更新する方法もありますが、必ずしも従来と同じベンダーを継続する必要はありません。更新を機に、他社製品も含めて比較することで、自院により適した選択肢がないか確認できます。

現在の電子カルテが院内業務に合わなくなったとき

導入当初は問題なく使えていた電子カルテでも、時間の経過とともに院内の業務や運用が変化し、使いにくさが生じることがあります。

現場の業務負担が増えていたり、現在求められる運用に対応しにくくなっていたりする場合は、機器の更新時期を待たずに、電子カルテ自体の見直しを検討する余地があります。

保守費用や更新費用を見直したいとき

電子カルテは、導入後も保守費用やライセンス料、機器の更新費用などが継続的に発生します。

特に、サーバーや端末の更新、大規模なバージョンアップなどによってまとまった費用が発生するタイミングでは、現在の電子カルテを今後も使い続けるかを見直すきっかけになります。

また、長期間利用するなかで保守費用や利用料が負担になっている場合も、電子カルテのリプレイスを検討するタイミングの一つです。

電子カルテをリプレイスするときに確認すべきポイント

現在の課題とリプレイスの目的を整理する

まずは、現在の電子カルテについてどのような課題を感じているのかを整理します。

例えば、操作に時間がかかる、二重入力や転記が発生している、必要なシステムと連携できない、保守やサポートに不満があるといった課題です。

こうした課題を明確にしないまま製品比較を始めると、機能の多さや価格だけで判断してしまい、新しい電子カルテでも同じ問題が残る可能性があります。

「何を改善するためのリプレイスなのか」を院内で共有しておくことで、製品選定の判断軸も明確になります。

必要な機能と業務フローを整理する

次に、現在利用している機能や業務フローを整理し、新しい電子カルテでも必要なものと、見直せるものを分けます。

現在の運用をすべてそのまま再現しようとすると、不要なカスタマイズが増えたり、非効率な業務まで引き継いだりする可能性があります。

そのため、

  • 必ず残す必要がある機能
  • 新たに追加したい機能
  • システム変更に合わせて見直せる業務
  • あれば便利だが必須ではない機能

などに整理すると、要件の優先順位をつけやすくなります。

現在の運用をそのまま再現するのではなく、必要な機能と見直せる業務を切り分けながら、新しい電子カルテに求める要件を整理していきます。

部門システム・医療機器との連携を確認する

病院では、電子カルテ以外にもPACSや検査、薬剤、リハビリ、手術など、さまざまな部門システムや医療機器が利用されています。

電子カルテを変更すると、これらのシステムとの接続方法も変わる可能性があります。そのため、現在利用しているシステムや機器を洗い出し、新しい電子カルテと連携できるかを事前に確認しておく必要があります。

また、連携できる場合でも、標準機能で対応できるのか、個別の接続開発や追加費用が必要なのかによって、導入条件は変わります。

特に病院では、電子カルテ単体の機能だけでなく、院内システム全体として問題なく運用できるかという視点が重要です。

費用・サポート・将来性まで含めて比較する

電子カルテを比較するときは、導入時の価格だけで判断しないことが大切です。

導入後には、保守費用やクラウド利用料、ライセンス費用などが継続的に発生するほか、システム連携や端末の追加によって費用が変わることもあります。

また、長期間利用するシステムであるため、障害時や問い合わせ時のサポート体制、診療報酬改定などへの対応、今後の医療DX施策や外部システムとの連携への対応状況も確認しておきます。

現在必要な機能だけでなく、導入後の運用や将来の拡張まで含めて比較することで、自院に適した電子カルテを選びやすくなります。

電子カルテのリプレイスで重要なデータ移行

どのデータを移行できるか確認する

現在の電子カルテには、患者基本情報のほか、病名、処方・注射、検査結果、オーダー履歴、カルテ本文、各種文書など、さまざまなデータが保存されています。

どこまで移行できるかは、現在利用している電子カルテと新しい電子カルテの仕様によって異なります。データの種類によっては、新しいシステムへそのまま取り込めない場合もあります。

そのため、リプレイスの検討段階から、移行可能なデータの種類や期間、移行後にどのような形で閲覧できるのかをベンダーに確認しておくことが大切です。

すべてのデータを新しい電子カルテへ移行するとは限らない

過去のデータを引き継ぐ方法は、新しい電子カルテへすべてをデータとして移行するだけではありません。

例えば、診療上必要性の高い情報は新しい電子カルテへ移行し、それ以外の情報はPDFなどで保存する方法や、旧電子カルテを参照用として一定期間利用する方法も考えられます。

移行するデータが多いほど、作業量や費用が増える場合があります。過去データの利用頻度や診療上の必要性も踏まえながら、何を新しい電子カルテへ移行し、何を別の方法で参照できるようにするかを整理します。

本稼働前にテスト移行を行う

データ移行では、本稼働前にテスト移行を行い、新しい電子カルテ上で正しく利用できるかを確認します。

具体的には、患者情報が正しく紐づいているか、必要な情報を検索・閲覧できるか、データの欠損や文字化けがないかなどを確認します。単にデータが移っているだけでなく、実際の診療や業務で問題なく参照できることが重要です。

テスト移行で見つかった問題を本番移行前に修正できるよう、確認期間も含めてスケジュールを組んでおく必要があります。

オンプレミス型からクラウド型へリプレイスするときの注意点

ネットワーク環境を確認する

クラウド型電子カルテはネットワークを経由して利用するため、オンプレミス型と比べてインターネット回線の重要性が高まります。

現在の回線や院内ネットワークで安定して利用できるかを確認し、必要に応じて回線容量やネットワーク機器、Wi-Fi環境などを見直します。

また、通信障害によって電子カルテへ接続できなくなる場合に備え、回線の冗長化や、障害発生時にどのような代替運用を行うかも事前に検討しておくことが重要です。

セキュリティや責任分界を確認する

クラウド型電子カルテでは、医療情報をクラウドサービス上で取り扱うため、サービス提供事業者と医療機関の双方で適切な安全管理が求められます。

ベンダー側のセキュリティ対策だけでなく、院内のアクセス権限や認証、端末管理、ログ管理などの運用も確認します。

また、障害やインシデントが発生した際に、ベンダーと医療機関のどちらが何を担うのか、責任分界や連絡体制についても事前に整理しておくとよいでしょう。

電子カルテをリプレイスする基本的な流れ

電子カルテのリプレイスでは、製品選定だけでなく、要件整理、システム構築、データ移行、職員研修など複数の工程があります。

現行システムの契約終了や更新時期から逆算し、全体の流れを把握したうえで余裕を持って準備を進めることが重要です。

電子カルテをリプレイスする7つのステップ

STEP1 現状・課題を整理する

現在の電子カルテや周辺システム、院内業務の状況を整理し、リプレイスによって何を改善したいのかを明確にします。

STEP2 リプレイスの要件を整理する

必要な機能や業務フロー、既存システムとの連携などを整理し、必須要件と希望要件を分けます。

STEP3 電子カルテ・ベンダーを比較する

整理した要件をもとに、機能、操作性、費用、サポート体制などを比較し、自院に合う電子カルテを絞り込みます。

デモを実施する場合は、一般的な機能説明だけでなく、自院で実際に行っている業務を想定して操作を確認すると、導入後の運用をイメージしやすくなります。

STEP4 システム構成・データ移行方法を決める

導入する電子カルテが決まったら、端末やネットワーク、周辺システムとの連携など、具体的なシステム構成を決めます。

あわせて、既存データをどこまで移行するか、移行しないデータをどのように参照するかも決定します。

STEP5 システムの構築・設定を進める

電子カルテの設定やマスタ登録、システム連携、端末・ネットワークの準備など、本稼働に必要な環境を整えます。

STEP6 データ移行・操作研修・リハーサルを行う

データ移行の結果を確認するとともに、職員への操作研修やリハーサルを行い、実際の業務で問題なく運用できるかを確認します。

医師、看護師、コメディカル、事務職など、実際に電子カルテを利用する職種が参加し、本稼働前に運用上の課題を洗い出しておくことが重要です。

STEP7 新しい電子カルテへ切り替える

準備が整ったら、新しい電子カルテへ切り替えます。

本稼働直後は操作や運用に関する問い合わせが発生しやすいため、院内の問い合わせ先やベンダーへの連絡方法をあらかじめ整理しておきます。稼働後に見つかった課題については、必要に応じて設定や運用を見直していきます。

まとめ|電子カルテのリプレイスは院内業務を見直す機会

電子カルテのリプレイスでは、新しい製品を選ぶだけでなく、現在の業務やシステム構成を整理し、データ移行や周辺システムとの連携、導入後の運用まで含めて検討する必要があります。

また、現在の電子カルテの使い方をそのまま新しいシステムへ引き継ぐのではなく、リプレイスを機に業務フローやシステム構成を見直すことで、院内業務の改善につなげることもできます。

シーズ・ワンでは、病院の業務・既存システムの整理から、電子カルテの選定、要件整理、ベンダー調整、データ移行、導入・稼働支援まで対応しています。

電子カルテの更新・リプレイスや、オンプレミス型からクラウド型への移行をご検討の際は、お気軽にご相談ください。

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監修

小松 大介
神奈川県出身。東京大学教養学部卒業/総合文化研究科広域科学専攻修了。 人工知能やカオスの分野を手がける。マッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタントとしてデータベース・マーケティングとビジネス・プロセス・リデザインを専門とした後、(株)メディヴァを創業。取締役就任。 コンサルティング事業部長。(株)シーズ・ワン 常務執行役員。200箇所以上のクリニック新規開業・経営支援、300箇以上の病院コンサルティング、50箇所以上の介護施設のコンサルティング経験を生かし、コンサルティング部門のリーダーをつとめる。近年は、病院の経営再生をテーマに、医療機関(大規模病院から中小規模病院、急性期・回復期・療養・精神各種)の再生実務にも取り組んでいる。主な著書に、「診療所経営の教科書」「病院経営の教科書」「医業承継の教科書」(医事新報社)、「医業経営を“最適化“させる38メソッド」(医学通信社)他

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