業務改善・DX
病院の見守りシステムとは?種類・選び方と導入時のポイントを解説
【監修】小松 大介
はじめに
病院では、転倒・転落への対応や夜間巡視など、患者の安全を守るために多くの「見守り」が行われています。近年では、こうした業務を支援する手段として、見守りカメラや離床センサーなどのICTを活用する選択肢も広がっています。
一方で、見守りシステムは導入すれば自動的に看護業務が効率化するものではありません。システムの種類や機能だけでなく、対象患者の設定やアラートへの対応、巡視・訪室など既存業務との組み合わせまで考える必要があります。
本記事では、病院で利用される見守りシステムの種類や選び方、導入後の運用設計、実際の導入の進め方について解説します。
病院の見守りシステムとは
見守りカメラやセンサーを活用して患者の状態を把握する仕組み
病院の見守りシステムとは、カメラや各種センサーなどを活用し、患者の状態や行動を把握する仕組みです。起き上がりや離床、体動などを検知し、必要に応じてナースコールやスマートフォンなどへ通知することで、看護師の確認や対応を支援します。
「見守りシステム」というと、病室に設置したカメラで患者の様子を確認する仕組みをイメージしやすいですが、実際にはカメラを使用しないセンサー型の機器も多くあります。
重要なのは、患者の状態をどのように検知し、その情報を誰に、どのように伝えて対応につなげるかという点です。
病院ではさまざまな見守り機器が活用されている
病院で利用される見守り機器には、見守りカメラのほか、離床センサー、ベッド・マット型のセンサー、AIや画像解析を活用したシステムなどがあります。検知できる動作や確認方法は方式によって異なるため、導入目的や対象患者に応じて選ぶ必要があります。
それぞれの特徴については、後ほど詳しく解説します。

病院で見守りシステムが注目されている理由
転倒・転落や離床への対応が求められている
高齢患者や認知症、せん妄のある患者では、起き上がりや離床後に転倒・転落へつながるリスクがあります。一方、看護師がすべての患者を常時目視することは難しく、患者の動きをどのように早く把握するかが課題となります。
見守りカメラや離床センサーなどを活用すれば、患者の起き上がりや離床などを検知し、必要な確認や訪室につなげることができます。
また、身体的拘束をできる限り行わずに患者の安全を確保するという観点からも、見守りシステムを活用できる場合があります。2026年度診療報酬改定では、身体的拘束の最小化について、患者の尊厳や療養環境の質を踏まえた取り組みの強化が示されています。
見守りシステムの導入だけで身体的拘束をなくせるわけではありませんが、安全確保の方法を検討する際の選択肢の一つになり得ます。
夜間巡視や確認業務の負担軽減が求められている
夜勤帯では、限られた人数の看護師が複数の患者を担当し、定期的な巡視や離床確認、ナースコールへの対応などを行います。そのため、病棟内の移動や患者の状態確認そのものが大きな負担になることがあります。
見守りシステムによって患者の状態を離れた場所から確認できれば、状況に応じて訪室の必要性を判断しやすくなります。
これは単に巡視回数を減らすことを意味するものではありません。必要な患者には訪室しつつ、必ずしも訪室を必要としない場面では見守りシステムを活用するなど、確認方法そのものを見直すことがポイントです。
不要な訪室を減らすことができれば、看護師の移動や確認業務の負担軽減だけでなく、夜間に患者の睡眠を妨げにくくなるなど、療養環境の改善につながる可能性もあります。
看護師不足を背景にICTを活用した業務効率化が進められている
看護師をはじめとする医療人材の確保が課題となる中、限られた人員で必要な医療・看護を提供するためには、ICTを活用した業務効率化も重要になります。
2026年度診療報酬改定では、看護業務における「見守り」「記録」「医療従事者間の情報共有」にICT機器等を組織的に活用した場合、一定の要件のもとで看護要員の配置基準を1割以内の範囲で柔軟化する仕組みが設けられました。
見守りシステムは、患者の安全を支えながら、病棟内の確認や巡視などの業務を効率化する手段としても期待されています。
病院で利用される見守りシステムの主な種類
病院で利用される見守りシステムには、カメラや各種センサーなど、さまざまな方式があります。それぞれ把握できる情報や検知のタイミングが異なるため、導入目的や対象患者に応じて選ぶことが重要です。
代表的な種類を整理すると、以下のようになります。
| 種類 | 主な特徴 | 向いている場面・用途 |
| カメラ型 | 病室内の映像から患者の状態や動きを確認する | 離れた場所から患者の状態を確認したい場合 |
| センサー型 | 赤外線や動体センサーなどを使って患者の動きを検知する | 起き上がりや離床などを早期に把握したい場合 |
| ベッド・マット型 | 荷重や体動などからベッド上の状態や離床を検知する | ベッド周辺の動きを把握したい場合 |
| AI・画像解析型 | 映像やセンサーデータを解析し、特定の動作や状態を判定する | より細かな患者の動きや状態を把握したい場合 |
カメラ型は、患者の状態を映像として確認できる点が特徴です。一方で、撮影範囲や映像の保存方法など、プライバシーへの配慮が特に重要になります。
センサー型やベッド・マット型は、映像を使わずに患者の起き上がりや離床などを把握できるものがあります。ただし、製品によって検知できる動作やタイミングは異なります。
また、近年ではAIや画像解析を活用し、単に動きを検知するだけでなく、患者の姿勢や行動を判定する仕組みもあります。ただし、「AI搭載」といった名称だけで判断するのではなく、自院が把握したい状態をどこまで検知できるのかを確認することが大切です。
なお、実際の製品では複数の方式や機能を組み合わせているケースもあります。そのため、上記の分類だけで製品を選ぶのではなく、導入目的に必要な機能を整理したうえで比較する必要があります。
ナースコール・スマートフォン等へ通知できるものもある
見守りシステムには、患者の離床や動きを検知した際に、ナースコールやスマートフォンなどへ通知できるものもあります。
「何を検知できるか」だけでなく、その情報をどの端末で確認できるかによって、実際の使い方は変わります。既存システムとの具体的な連携については、後ほど選定時のポイントとして解説します。
病院が見守りシステムを選ぶときのポイント
自院の課題に合った検知・通知方法か
まずは、見守りシステムを使って何を改善したいのかを整理します。
例えば、
- 転倒・転落リスクのある患者の動きを早く把握したい
- 離床を早期に検知したい
- 夜間巡視の負担を軽減したい
- 患者の状態を離れた場所から確認したい
- 病棟内の移動や確認業務を減らしたい
など、目的によって必要な機能は異なります。
そのうえで、何を検知できるのか、どのタイミングで検知するのか、誤検知がどの程度あるのか、どこへ通知できるのかなどを確認します。
また、アラートの優先度や通知条件を調整できるかも確認しておきます。
映像・動画を記録できるシステムの場合は、その記録をどのように活用するかも確認しておきます。転倒・転落などのインシデント発生時に状況を振り返ることで、原因分析や再発防止策の検討、必要に応じた患者・家族への説明に活用できる場合があります。
既存システム・院内ネットワークと連携できるか
見守りシステムは、単体で利用するだけでなく、ナースコールやスマートフォンなどと連携して使用するケースもあります。
そのため、
- ナースコール
- スマートフォン
- PHS
- 電子カルテ等の院内システム
- Wi-Fiや院内ネットワーク
との連携可否や影響を確認しておく必要があります。
例えば、スマートフォンへの通知を想定していても、病棟内のWi-Fi環境が不安定であれば、期待した運用ができない可能性があります。また、既存のナースコールとの連携に追加機器や改修が必要になる場合もあります。
見守りシステムだけを見るのではなく、現在の院内ICT環境や今後のシステム構成も踏まえて検討することが重要です。
セキュリティ・患者のプライバシーに配慮できるか
特にカメラや映像を利用する見守りシステムでは、患者のプライバシーへの配慮が欠かせません。
例えば、
- カメラをどこに設置するか
- 誰が映像を閲覧できるか
- 映像やデータを保存するか
- 保存する場合はどの程度の期間とするか
- どのような目的で記録を利用するか
- 患者・家族へどのように説明するか
などをあらかじめ整理しておく必要があります。
また、医療情報を扱う場合には、アクセス権限や認証、ネットワーク構成など、情報セキュリティの確認も必要です。
製品側のセキュリティ機能だけでなく、病院側で誰がどの情報を扱うのかという運用ルールまで含めて考えることが重要です。
導入費用だけでなく保守・運用負荷まで確認する
見守りシステムの費用を比較する際は、機器本体や初期導入費用だけで判断しないようにします。
確認しておきたい費用としては、
- カメラ・センサー等の機器費
- 初期設定・導入費
- 月額利用料やライセンス費
- ナースコール等との連携費
- Wi-Fiやネットワークの整備費
- 保守・サポート費
- 更新・機器交換にかかる費用
などがあります。
また、システムの設定変更や対象患者の管理、職員への教育など、院内側にどの程度の運用負荷が発生するかも確認が必要です。
導入時の価格だけでなく、実際に継続して使い続けるために必要な費用と業務まで含めて比較することが大切です。
見守りシステムは導入後の運用設計が重要
対象患者とアラート対応のルールを決める
見守りシステムを導入する際は、まず「誰に、どのような見守りを行うのか」を明確にします。
すべての患者に同じ設定を適用するのではなく、転倒・転落リスクや認知機能、ADL、病棟での過ごし方などを踏まえて、対象患者や検知内容を決めることが重要です。
そのうえで、
- アラートを誰に通知するか
- 誰が内容を確認するか
- どのアラートで訪室するか
- すぐに対応できない場合は誰に引き継ぐか
- 対象患者や設定をいつ見直すか
といった対応ルールも整理しておきます。
検知機能だけを設定し、アラート後の対応を現場任せにすると、スタッフごとに判断がばらつきやすくなります。見守りシステムから得られた情報を、実際の看護業務にどうつなげるかまで決めておく必要があります。
アラートが増えすぎない運用を設計する
見守りシステムを導入すると、これまで把握できなかった患者の動きを検知できるようになります。一方で、検知条件を広く設定しすぎると、多くのアラートが発生し、確認や訪室が増えることもあります。
その結果、導入前より業務負荷が高くなったり、頻繁な通知に慣れることで重要なアラートへの反応が鈍る、いわゆる「アラート疲れ」が生じたりする可能性があります。
そのため、前述した対象患者や通知先に加え、検知する動作、閾値、アラートの優先度などを、実際の病棟運用に合わせて調整する必要があります。
特にPoCやテスト導入では、「正しく検知できたか」だけを見るのでは十分ではありません。1勤務あたり何件のアラートが発生したのか、そのうち実際に対応が必要だったものはどの程度だったのか、確認や訪室がどれだけ増減したのかまで確認します。
通知を増やすこと自体が患者安全の向上につながるわけではありません。必要なアラートを、必要な職員へ、適切なタイミングで届けられる状態を目指します。
巡視・訪室など既存の業務フローを見直す
見守りシステムを導入しても、従来の巡視や訪室をすべてそのまま続ければ、システムを確認する業務だけが追加され、効率化につながらないことがあります。
例えば、見守りシステムから患者の状態を把握できるのであれば、
- 夜間巡視
- 離床確認
- 患者の状態確認
- ナースコールへの対応
- 転倒・転落リスクへの対応
などについて、従来と同じ方法・頻度で行う必要があるのかを改めて検討します。
また、患者の離床や生活パターン等を把握できるシステムであれば、排泄ケアのタイミングを見直せる場合もあります。一律の時間に訪室・介助するのではなく、患者の状態に合わせて対応することで、職員の業務量だけでなく、患者側の負担軽減にもつながる可能性があります。
見守りシステムを「今ある業務に追加するICT」と捉えるのではなく、ICTから得られる情報を前提に、業務フローそのものを見直していく必要があります。
現場スタッフが納得して使えるよう導入を進める
新しいシステムの導入では、現場スタッフから不安や反発が生じることもあります。
例えば、
- 「アラートが増えて仕事が増えるのではないか」
- 「これまでのやり方の方が早い」
- 「新しい操作を覚える負担が増える」
- 「本当に患者安全につながるのか」
といった声が出ることは珍しくありません。
そのため、「導入が決まったので使ってください」と一方的に進めるのではなく、なぜ導入するのか、どの業務を改善したいのかを現場と共有します。
また、PoCや製品選定の段階から実際に使用する看護師に参加してもらい、操作性やアラートの出方、業務への影響について意見を集める方法も有効です。
導入後も、現場から出た課題に応じて通知条件や業務フローを調整したり、病棟内に推進役となるスタッフを置いたりするなど、継続的にフォローできる体制を整えます。
システムを設置した時点ではなく、現場で無理なく継続して使われる状態まで含めて導入を進めていくことがポイントです。
関係部署を巻き込み、導入効果を確認する
見守りシステムの導入は、看護部だけで完結するとは限りません。
例えば、転倒・転落対策であれば医療安全、ネットワークや端末との連携であれば情報システム、投資判断や効果測定であれば事務・経営企画など、導入目的に応じて複数の部署が関わります。
そのため、検討段階から必要な部署を巻き込み、それぞれの役割や確認事項を整理しておきます。
また、本導入後は、
- 巡視時間・回数
- 訪室回数
- 病棟内の移動時間
- アラート件数
- 転倒・転落等のインシデント
- 看護師の負担感
- 超過勤務時間
など、導入目的に応じた指標で効果を確認します。
必要に応じて、夜間の訪室回数や患者の睡眠への影響なども確認します。
見守りシステムの効果は、「転倒件数が減ったか」だけでは評価できません。患者安全、看護師の業務負担、患者への影響など、複数の観点から確認し、必要に応じて運用を見直します。
病院への見守りシステム導入の進め方
STEP1 現在の課題・業務を整理する
まずは、現在どのように患者を見守っているのかを整理します。
夜間巡視、離床確認、転倒・転落への対応、ナースコール対応などを確認し、どの業務に負担や課題があるのかを把握します。
STEP2 導入目的・対象を決める
次に、見守りシステムによって何を改善したいのかを明確にします。
転倒・転落リスクへの対応、夜間巡視の効率化、離床の早期把握など、目的を整理したうえで、対象となる病棟や患者を決めます。
あわせて、導入後の効果を確認するための指標も検討しておきます。
STEP3 必要な機能・要件を整理する
導入目的をもとに、必要な機能や条件を整理します。
例えば、
- 何を検知したいか
- どこへ通知したいか
- ナースコールやスマートフォンと連携するか
- 映像・動画を記録する必要があるか
- 院内ネットワークへどのように接続するか
- セキュリティやプライバシーをどのように確保するか
などです。
必須要件と希望要件を分けておくと、製品を比較しやすくなります。
STEP4 製品・ベンダーを比較する
整理した要件をもとに、複数の製品・ベンダーを比較します。
機能や費用だけでなく、実際の病棟で使いやすいか、既存システムと連携できるか、導入後のサポート体制まで含めて確認します。
STEP5 PoC・テスト導入を行う
本導入前に、一部の病棟や患者を対象としてPoCやテスト導入を行います。
検知精度や誤検知だけでなく、アラート件数、確認・訪室回数、看護師の使いやすさなどを確認し、実際の業務で活用できるかを検証します。
STEP6 本導入・運用変更を進める
PoCの結果を踏まえて、本導入に向けた運用を整えます。
対象患者の選定基準、アラートへの対応方法、巡視・訪室の方法、職員教育やマニュアルなどを整理し、必要に応じて従来の業務フローも見直します。
STEP7 効果を測定し、運用を改善する
本導入後は、あらかじめ設定した指標や現場からの意見をもとに効果を確認します。
アラートの多さや業務負荷などに課題があれば、システム設定や運用ルールを見直し、現場に合った使い方へ改善していきます。

まとめ|見守りシステムは導入後の運用まで考えて検討する
見守りシステムは、患者の安全確保や看護業務の負担軽減を支える手段の一つです。一方、導入によってアラートや確認業務が増える可能性もあるため、機器選定だけでなく、対象患者や通知条件、巡視・訪室などの運用まで含めて検討することが重要です。
また、実際に活用する看護師が納得して使える仕組みにできるか、患者の睡眠や療養環境にどのような影響があるかといった視点も欠かせません。
シーズ・ワンでは、見守りシステムを含む病院ICTについて、現状の業務・課題整理から、必要な機能の整理、製品・ベンダー比較、PoC、院内調整、導入後の運用設計・定着まで支援しています。
見守りシステムの導入や、ICTを活用した看護業務の見直しをご検討の際は、お気軽にご相談ください。
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監修
小松 大介
神奈川県出身。東京大学教養学部卒業/総合文化研究科広域科学専攻修了。 人工知能やカオスの分野を手がける。マッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタントとしてデータベース・マーケティングとビジネス・プロセス・リデザインを専門とした後、(株)メディヴァを創業。取締役就任。 コンサルティング事業部長。(株)シーズ・ワン 常務執行役員。200箇所以上のクリニック新規開業・経営支援、300箇以上の病院コンサルティング、50箇所以上の介護施設のコンサルティング経験を生かし、コンサルティング部門のリーダーをつとめる。近年は、病院の経営再生をテーマに、医療機関(大規模病院から中小規模病院、急性期・回復期・療養・精神各種)の再生実務にも取り組んでいる。主な著書に、「診療所経営の教科書」「病院経営の教科書」「医業承継の教科書」(医事新報社)、「医業経営を“最適化“させる38メソッド」(医学通信社)他