TOP > コラム > 電子カルテの費用を解説|導入・保守・更新の内訳と価格が変わるポイント

電子カルテ

電子カルテの費用を解説|導入・保守・更新の内訳と価格が変わるポイント

【監修】小松 大介

目次

はじめに

電子カルテの導入・更新を検討する際、「どのくらいの費用がかかるのか」は気になるポイントの一つです。

しかし、電子カルテの費用は、医療機関の規模や導入形態、必要な機能、既存システムとの連携などによって大きく異なります。そのため、単純にシステム本体の価格だけで比較するのではなく、どのような費用が発生し、何によって金額が変わるのかを知っておくことが大切です。

本記事では、電子カルテにかかる費用について、導入・運用・更新の観点から分かりやすく解説します。

電子カルテの費用はどのくらいかかる?

電子カルテにかかる費用は、医療機関の規模やシステム構成によって大きく異なり、特に多数の部門間連携が必要な病院では、導入費用だけでも数千万円以上になる場合もあります。一方で、同じ病床規模でも、既存システムをどこまで活用するかなどによって費用は変わります。また、電子カルテは導入して終わりではなく、その後の運用・更新を見据えたコスト管理が求められます。そのため「電子カルテは○〇万円」と一律の相場で捉えるのは難しいのが実情です。
電子カルテの費用を検討する際は、大きく「導入時」「運用時」「更新時」の3つに分けて考えると整理しやすくなります。

タイミング主な費用
導入時電子カルテ本体、初期ライセンス費用、端末、サーバー、ネットワーク、システム連携、データ移行など
運用時保守・サポート、クラウド利用料、月額・年額のライセンス費用、ネットワーク・セキュリティ関連費用など
更新時サーバー・端末の更新、システム更新、電子カルテ入れ替えに伴うデータ移行など

導入時の見積金額だけでは、電子カルテにかかる費用全体を把握できません。導入後の保守や利用料、将来的な更新まで含めて、どのような費用が発生するのかを確認しておくことが大切です。

電子カルテの導入費用には何が含まれる?

電子カルテ・ライセンスの費用

まず必要になるのが、電子カルテシステム本体やライセンスの費用です。

料金体系は製品によって異なり、システムの基本料金に加えて、利用する機能やユーザー数、端末数などに応じて費用が設定される場合があります。また、レセプトコンピューターや文書管理などを一体で導入するか、既存システムを継続して利用するかによっても構成は変わります。

見積もりを確認する際は、基本料金だけでなく、どの機能やライセンスが含まれているのかを確認する必要があります。

サーバー・パソコンなどの機器費用

電子カルテを利用するためには、パソコンやモニター、プリンター、スキャナーなどの機器も必要です。

病院では、診察室だけでなく、病棟、受付、医事部門、各診療部門など多くの場所で電子カルテを利用するため、必要な端末数も多くなります。

オンプレミス型の場合は、これらに加えて院内に設置するサーバーやバックアップ機器などの費用も発生します。

院内ネットワーク・インフラの整備費用

電子カルテを院内で安定して利用するためには、ネットワーク環境の整備も欠かせません。

既存の有線LANやWi-Fiをそのまま利用できる場合もありますが、端末数の増加や利用場所の拡大に伴い、LAN配線やアクセスポイント、ネットワーク機器などの追加・更新が必要になることがあります。

また、医療情報を扱うため、ネットワークの分離やアクセス制御など、セキュリティ面の対応もあわせて検討する必要があります。

※院内ネットワークの整備については「病院のWi-Fi整備とは?院内ネットワークの基礎と導入・見直しのポイントを解説」の記事で詳しく解説しています。

部門システム・医療機器との連携費用

病院では、電子カルテだけで業務が完結するわけではありません。

例えば、画像管理システム(PACS)、検査、薬剤、リハビリ、給食、手術など、院内ではさまざまな部門システムが利用されています。電子カルテとこれらのシステムとの間で患者情報や検査結果などを連携する場合、「接続」や「設定」に費用が発生します。

既存システムを継続利用する場合は、新しい電子カルテとの連携可否や、追加の改修が必要かどうかも事前に確認しておくことが重要です。

データ移行・初期設定・導入支援の費用

既存の電子カルテから新しいシステムへ入れ替える場合は、患者情報や診療情報などのデータ移行も必要になります。

また、院内で使用するマスタや帳票の設定、操作研修、本稼働前のリハーサルなど、実際に電子カルテを使い始めるための準備にも費用がかかります。

どこまでをベンダーに依頼し、どこからを病院側で対応するかによっても費用は異なるため、見積もり時には導入支援の範囲まで確認しておきましょう。

電子カルテの費用を左右する主なポイント

電子カルテの費用を左右する5つの要素

①医療機関の規模・病床数

医療機関の規模が大きくなるほど、電子カルテを利用する診療科や病棟、部門が増え、必要なシステム構成も大きくなる傾向があります。

また、病床数が多い場合は、病棟で利用する端末や関連システムも増えるため、導入費用に影響します。加えて、手術室や検査部門、リハビリ部門など、院内でどのような診療機能を持っているかによっても必要な構成は異なります。

そのため、電子カルテの費用を考える際は、病床数だけでなく、診療科や病棟、部門構成などを含めた医療機関全体の規模を確認することが重要です。

②利用する端末・職員数

電子カルテを利用する端末数や職員数も、費用に影響します。

診察室や病棟、受付、各部門に設置するパソコンが増えれば、その分の機器費用が必要になります。また、製品によってはユーザー数や同時接続数などに応じてライセンス費用が変わる場合があります。

タブレットやスマートフォンなどを利用する場合は、端末そのものに加えて、端末管理やセキュリティ対策なども含めて検討する必要があります。

③連携するシステムや医療機器の数

電子カルテと連携する部門システムや医療機器が多いほど、接続設定や動作確認に必要な作業が増えるため、費用も高くなる傾向があります。

既存システムを継続利用する場合は、新しい電子カルテとの連携可否や、追加改修の有無も費用に影響します。

④カスタマイズの範囲

電子カルテの標準機能だけでは対応できない場合、独自の画面や帳票、機能などを追加するカスタマイズが行われることがあります。

カスタマイズの範囲が広いほど、設計や開発にかかる費用が増えるほか、導入後の改修やシステム更新時にも追加対応が必要になる可能性があります。

導入時には、現在の業務をそのままシステムへ反映することを前提とせず、標準機能で対応できる範囲も確認しながら、必要なカスタマイズを整理することが大切です。

⑤既存システムからのデータ移行

電子カルテを更新・入れ替える場合は、既存システムからどのデータを移行するかによっても費用が変わります。

患者基本情報だけを移行する場合と、過去の診療記録や検査結果なども含めて移行する場合では、必要な作業量が異なります。また、旧システムと新システムでデータ形式が異なる場合には、変換や確認作業が必要になることもあります。

移行対象を必要以上に広げると費用や作業負担も大きくなるため、診療や業務上どのデータを新しい電子カルテへ引き継ぐ必要があるかを事前に整理しておくことが重要です。

オンプレミス型とクラウド型で費用はどう違う?

オンプレミス型は初期投資が大きくなりやすい

オンプレミス型は、院内にサーバーなどのシステム環境を構築して電子カルテを利用する方式です。

電子カルテ本体やライセンスに加え、サーバーやバックアップ機器の導入、システム構築などが必要になるため、クラウド型と比較すると初期費用は大きくなりやすい傾向があります。

また、導入後も保守費用がかかるほか、一定期間使用した後にはサーバーや関連機器の更新費用も見込んでおく必要があります。

クラウド型は初期費用を抑えやすい一方で継続費用が発生する

クラウド型は、クラウド上に構築された電子カルテをネットワーク経由で利用する方式です。

院内に電子カルテ用のサーバーを設置する必要がないため、サーバー購入やシステム構築にかかる初期費用を抑えやすい点が特徴です。一方、月額・年額の利用料が継続して発生し、利用人数や機能、オプションなどによって料金が変わる場合があります。

初期費用だけでなく、利用期間全体でどの程度の費用がかかるかを確認する必要があります。

初期費用だけでなく総コストで比較する

オンプレミス型とクラウド型では、費用が発生するタイミングや内訳が異なります。

項目オンプレミス型クラウド型
初期費用大きくなりやすい抑えやすい
サーバー院内への設置が必要電子カルテ用サーバーは原則不要
利用・保守費用保守費用などが発生月額・年額利用料などが発生
機器更新サーバー等の更新が必要サーバー更新の負担を抑えやすい
費用の特徴初期投資の比重が大きい継続費用の比重が大きい

どちらが適しているかは、医療機関の規模や既存システム、必要な機能などによって異なります。一方、国は病院情報システムについて、オンプレミス型からクラウド型への移行を進める方針を示しており、今後電子カルテを新規導入・更新する際には、クラウド型が有力な選択肢となります。

ただし、クラウド型であれば必ずコストを抑えられるとは限りません。月額・年額利用料や必要な機能、システム連携まで含め、一定期間利用した場合の総コストで比較することが重要です。

※クラウド型電子カルテの特徴や選定ポイントについては、「クラウド型電子カルテとは?オンプレとの違いと中小病院が導入時に確認すべきポイント」に関する記事で詳しく解説しています。

電子カルテ導入後にかかる保守・更新費用

保守・サポート費用

電子カルテの稼働後は、システムの保守や問い合わせ対応、障害時のサポートなどに費用がかかります。

保守費用や契約内容は製品・ベンダーによって異なり、診療報酬改定への対応やバージョンアップなどが基本料金に含まれる場合もあれば、内容によって追加費用が発生する場合もあります。

そのため、保守費用の金額だけではなく、どこまでが保守契約に含まれているのかを確認することが重要です。

クラウド利用料・ライセンスなどの運用費用

クラウド型電子カルテでは、月額・年額の利用料が継続して発生するのが一般的です。また、契約形態によっては、利用者数や端末数、追加機能などに応じたライセンス費用がかかる場合があります。

そのほか、ネットワーク回線やセキュリティ対策など、電子カルテを安定して利用するための周辺費用も考慮する必要があります。

導入時の初期費用だけでなく、毎年どの程度の運用費用が発生するのかを把握しておくことが大切です。

サーバー・端末・システムの更新費用

電子カルテを長期間利用するなかでは、システム本体だけでなく、サーバーやパソコン、ネットワーク機器なども更新時期を迎えます。

特にオンプレミス型では、サーバー等の機器更新にまとまった費用が発生する場合があります。また、電子カルテそのものを入れ替える場合には、新しいシステムの導入に加えて、データ移行やシステム連携の再構築なども必要になります。

電子カルテの費用を検討する際は、導入時の予算だけでなく、将来的な更新まで見据えて費用を整理しておくことが重要です。

電子カルテの耐用年数と減価償却

システムの更新時期と法定耐用年数は別に考える

電子カルテの実際の更新時期は、製品のサポート期間やサーバー・OSの更新、病院の運用方針などによって異なります。

一方、法定耐用年数は、減価償却を行う際に用いる税務上の年数です。電子カルテのソフトウェアについては、通常、法定耐用年数は5年となります。
ただし、この5年は税務上の耐用年数であり、「電子カルテを5年で必ず入れ替える」という意味ではありません。実際の利用期間と税務上の処理は分けて考える必要があります。

参考:国税庁「No.5461 ソフトウエアの取得価額と耐用年数」

ソフトウェアや機器によって耐用年数が異なる

電子カルテを導入する際には、ソフトウェアだけでなく、サーバーやパソコン、ネットワーク機器など複数の資産が含まれる場合があります。

これらはすべて同じ耐用年数が適用されるわけではなく、資産の種類によって取り扱いが異なります。

そのため、電子カルテ導入費用を一括して判断するのではなく、見積もりに含まれる資産の内容を確認したうえで、適切に会計・税務処理することが必要です。

電子カルテの見積もりを確認するときのポイント

必要なシステム・連携範囲を事前に整理する

ベンダーへ見積もりを依頼する前に、現在利用しているシステムや継続利用するシステム、必要な機能、端末数、データ移行の範囲などを整理しておきます。

要件が曖昧なまま複数のベンダーへ見積もりを依頼すると、それぞれ異なる条件で金額が提示され、比較しにくくなります。

また、現在のシステムや業務をそのまま再現することを前提とせず、新しい電子カルテの標準機能で対応できる部分がないかを確認することも重要です。

見積もりに含まれる費用の範囲を確認する

見積もりでは、電子カルテ本体の価格だけでなく、端末やサーバー、システム連携、データ移行、導入支援、保守などにかかる費用がどこまで含まれているかを確認します。

一見すると安い見積もりでも、必要な機能や作業が別料金となっている場合があります。見積もりの前提条件や対象範囲を確認することが大切です。

導入後・更新時の費用をシミュレーションする

電子カルテは、導入後も保守費用や利用料が発生し、将来的には機器やシステムの更新も必要になります。

契約時点で確認できる費用だけでなく、将来的に発生する費用も想定し、中長期的な総コストをシミュレーションしておくことが大切です。

まとめ

電子カルテの導入・維持にかかる費用は、医療機関の規模や導入形態、必要な機能・システム構成によって大きく異なります。価格だけで判断せず、自院に合った構成を整理したうえで検討することが重要です。

シーズ・ワンでは、病院の業務や既存システムの整理から、電子カルテの選定、要件整理、ベンダー調整、導入支援まで対応しています。電子カルテの新規導入や更新をご検討の際は、お気軽にご相談ください。


監修

小松 大介
神奈川県出身。東京大学教養学部卒業/総合文化研究科広域科学専攻修了。 人工知能やカオスの分野を手がける。マッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタントとしてデータベース・マーケティングとビジネス・プロセス・リデザインを専門とした後、(株)メディヴァを創業。取締役就任。 コンサルティング事業部長。(株)シーズ・ワン 常務執行役員。200箇所以上のクリニック新規開業・経営支援、300箇以上の病院コンサルティング、50箇所以上の介護施設のコンサルティング経験を生かし、コンサルティング部門のリーダーをつとめる。近年は、病院の経営再生をテーマに、医療機関(大規模病院から中小規模病院、急性期・回復期・療養・精神各種)の再生実務にも取り組んでいる。主な著書に、「診療所経営の教科書」「病院経営の教科書」「医業承継の教科書」(医事新報社)、「医業経営を“最適化“させる38メソッド」(医学通信社)他

男性のアイコン

入力内容をご確認ください

お問い合わせ項目
お名前
法人名 / 病院名
役職 / 部署
メール
電話番号
お問い合わせ内容

入力内容をご確認ください。
内容にお間違いがなければ送信してください。

お名前
法人名 / 病院名
メールアドレス
電話番号